2010年10月12日火曜日

巡回展(2) アリスちゃんの洋服

  
 「青い目の人形」アリスちゃんと、答礼人形「ミス徳島」を見てくださいましたか。

 当館に展示中のアリスちゃんは神領小学校の制服を着ていますが、本来の洋服は右横に展示してあるワンピース型のドレスでした(下の写真)。この洋服を、皆さんはどのように感じられましたでしょうか。83年も前の洋服が、現在でも十分着られるように思いませんでしたか。


 
 日本は、明治時代に洋服が入ってくるまで、着丈・胴回りを自由に調整する着物文化でした。洋服文化においては、16世紀頃から、コルセットで体の形を整えることが広まり、18世紀に入ると、女性はウエストを細く締め付け、胸元の広いドレスが一般的になりましたが、いわゆる「子ども向け」の服装はありませんでした。

 ところが、18世紀後半、ルソーの自然主義の考え方が入り、「子どもの身体をきつく縛ったり、固定することは、身体の成長だけでなく、精神にも悪い影響を与える」と、言われはじめました。それで流行したのが、ワンピース型ドレスです。

 本来のアリスちゃんの洋服も、ワンピース型のドレスでした(下の写真)。とても着心地がよい、活動しやすい洋服です。また、洋服の生地は、木綿と思われますが、浴衣のような堅い素材の木綿ではなく、綿ローンの肌にやさしい生地を使用しております。


 
 そして、ペチコート(下着)の縁取りもご覧下さい(下の写真)


 
 洋服と共にレースが発展しましたので、ペチコートの縁どりのレースは、ボビンで製作された手作りのレースではないかと思われます。後に着替えとして日本で製作された洋服(さらに右のケースで展示)のレースと比較してみてください(下の写真)。違いがわかるでしょう。


 
 たかが洋服と思われるかもしれませんが、この小さい人形衣装の中に、洋服の形、レース、色、刺繍など、日本の歴史にないものがたくさん詰まっています。現在見ても大変感慨深く感じるのですから、当時の人達は、我々の想像のつかない程、驚かれたのではないでしょうか。

(学芸員 舩井由美子)