2015年11月29日日曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第4回)開催記録


11月22日、講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第4回目が開催されました。今回は、町内に遺る石碑・石造物を実際に見て回る石碑めぐりのフィールドワークを行いました。

【概要】
講 師:松下 師一氏(町文化財保護審議会委員)
内 容:フィールドワーク「町内石碑巡り」


資料館研修室にて順路を確認したのち、フィールドワークに出かけました。主な順路は、豊久地区から長原地区にかけて巡り、徳島市川内町まで足を伸ばしました。


まずは、町の北東部に位置し徳島阿波おどり空港近くにある、豊久開基碑を確認しました。講師の解説後、受講生で銘文を読んでみました。


続いては、豊岡神社境内に立つ豊岡開拓碑と、阿波・淡路の特色ある石碑のひとつ五角柱の地神塔(通称地神さん)を巡りました。

豊岡
地神塔(通称地神さん)は、寛政元年(1789)に阿波藩第11代藩主蜂須賀治昭が、阿波・淡路の庄屋に、地神塔を建て春秋の社日に地神祭を行うよう命じたことが起源とされています。

地神塔(地神さん)
長原地区の住宅地に立てられている阪東熊八郎の碑や、徳島市川内町にある台湾・製糖事業の碑へも足を運びました。

阪東熊八郎の碑
台湾・製糖事業の碑
天気にも恵まれ、皆さんも散歩気分で石碑めぐりを終え大変満足そうでした。
フィールドワークで歩くことができなかった地域にも、数多くの石碑・石造物が遺っています。散歩がてら文化財散策を楽しんでみるのもいかがでしょうか。
(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)」の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。

2015年11月28日土曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第3回)開催記録


11月8日、講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第3回を、松茂町中喜来にある向喜来自治会館にて開催しました。当日は、あいにくの雨により補修ワークショップの開催が危ぶまれましたが、無事に行うことができました。

【概要】
講 師:魚島純一氏(奈良大学教授)
演 題:「石造文化財の劣化と保存」
ワークショップ:石造物補修

まずは、自治会館内で座学を行いました。内容は、魚島先生がこれまでに国内外でおこなった石造物の補修作業の事例や、石造物が劣化する要因などです。


カンボジアのアンコールワット遺跡群にある西トップ寺院の解体修理プロジェクトにも参加され、現地スタッフと共に石材クリーニングなどを行ったそうです。


石造文化財の劣化原因や保存修復方法について、専門的な用語や技法を交えながらも分かりやすく指導いただきました。

*     *     *

つづいて、自治会館の外にある石造物で実際に補修ワークショップを行いました。
修復は、石造文化財専用の修復溶剤を使って行いました。


溶剤の性質上、水分が厳禁のため数日前から養生を施しました。座学の時には、激しい雨でしたが、養生した甲斐がありました。

養生した石造物

補修前の石造物
いよいよ、補修作業のはじまりです。まずは、対象の石造物の清掃を行います。石造物の笠を外すと、虫の死骸や砂埃が現れました。それを丁寧に掃除機で吸い取ります。


掃除終了後、講師の指示に従って、取り外した笠部分に補修溶剤を塗っていきます。石造物が溶剤を吸わなくなり、水たまりができるような状態にまで塗り続けます。


 本体部分にも同様に塗っていきます。


作業完了後、溶剤が乾燥し補修の効果がでるに2週間程かかります。(2週間後に使用した溶剤を確認したところ、しっかりと固まっていました。)

日ごろ、石碑や石造物の簡単な清掃をすることはあっても、補修作業は初めてという方がほとんでした。私自身も初めてであり、貴重な体験をすることができました。
(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)」の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。

2015年11月7日土曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第2回)開催記録




10月31日、資料館研修室にて、講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第2回が開催されました。

【概要】
 講 師:西本 沙織氏(徳島市教育委員会)
 演 題:「徳島の石造物と石材について」

徳島県の代表的な石材である「阿波の青石」とも呼ばれる結晶片岩などの石材について、利用の歴史的変遷事例などを交えて紹介されました。


徳島県内に遺る宝篋印塔や五輪塔などの写真から、石碑の種類や造られた年代を推定する方法などを学びました。


町内に遺る「豊岡開拓碑(町指定有形文化財)」などは、和泉砂岩(撫養石とも)と呼ばれる石材で造られています。この石材は、碑文を彫ることが容易である反面、風化が早く剥離しやすいといった問題も抱えています。

「豊岡開拓碑」についても、すでに明治時代末期には表面の一部が、はがれ落ちていたようです。

豊岡開拓碑(とよおかかいたくひ)

次回、第3回では、魚島純一氏(奈良大学教授)の講演と石碑の補修実演ワークショップを開催します。

(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。