2013年5月6日月曜日

常設展示室の“オバケ”顛末記

  
  先日、見学に来た子どもたちから、「奥の展示室にオバケがいる!」と事務室に連絡がありました。

  「あのね、奥の常設展示室には、見学者を関知するセンサーが付いていて、見学者が来ると自動的に解説映像を上映するから、オバケがいるわけじゃ無いよ。」と説明したのですが、「そんなん知ってるわよ!!」と強い口調で反論されました(「子ども扱いしないで!」、ということです)。

  曰く、「解説ビデオとは別に、“カガガー”とか、“バリバリッー”、“ドド・・・・”って、展示品が怒るのよ! ほなけん(阿波弁で「だから」の意)、オバケなんよ!」とのこと。

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  そこで、閉館後に常設展示室にオバケの正体を確認に行くと、確かに解説の音声に混じって、“カガガー”、“バリバリッー”、“ドド・・・・”と、ひどい雑音が鳴り響きます。しかも発生源はスピーカーでは無く、解説用映像モニターの奥からです。

  「ありゃ、こりゃいかん。」



  どうやらオバケの正体は、モニター機器の故障にともなう、機器内部のスパーク音のようです。さっそく、映像モニターの点検用扉を開けて、裏側の装置を確認です。



  まずは、映像の再生装置の確認です。開館当初は大きなレーザーディスクプレーヤーが置いてあり、そこから映像を送信していましたが、今ではお弁当箱ほどのCF(コンパクトディスク)プレーヤーに置き換わりました。特に異常なし。



  その隣が、背面投射型液晶プロジェクター(リアプロ)です。常設展示室「くらしの知恵」コーナー(旧・佐藤家住宅)の解説映像を映しています。当館が開館した1993年当時は、ブラウン管に替わる「夢の大型モニター」と言われたリアプロも、大型液晶テレビの低価格化と高品質化により、この20年間ほとんど普及せずに過去の技術となってしまいました(今どき、リアプロのモニターなど、どこにもありませんよね。これも貴重な収蔵資料だったりして)。



  オバケの正体は、このリアプロの故障のようです。映像自体は映っているのですが、通電とともにオバケの叫び声と勘違いするような酷い音が発生するので、さっそく使用中止です。たぶん電源部分の故障でしょう。このまま放置しておくと、発火等が心配されます。

  代わりに、これまた少し懐かしいブラウン管モニターを用意しました。映像信号の入力方法や、画面のタテ・ヨコ比の問題で、捨てずに残しておいた旧型機器を再活用です。いずれ、大型の液晶モニターに置き換えたいとは思いますが、当分の間、これで運用することになります。あしからずご了承ください。



  結局、子どもたちの言う“オバケ”はいませんでしたが、リアプロやブラウン管など、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた20世紀日本の電子製品に出会うことができました。見学に来てくれた子どもたち、どうもありがとう。

(主任学芸員 松下師一)