2015年11月28日土曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第3回)開催記録


11月8日、講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第3回を、松茂町中喜来にある向喜来自治会館にて開催しました。当日は、あいにくの雨により補修ワークショップの開催が危ぶまれましたが、無事に行うことができました。

【概要】
講 師:魚島純一氏(奈良大学教授)
演 題:「石造文化財の劣化と保存」
ワークショップ:石造物補修

まずは、自治会館内で座学を行いました。内容は、魚島先生がこれまでに国内外でおこなった石造物の補修作業の事例や、石造物が劣化する要因などです。


カンボジアのアンコールワット遺跡群にある西トップ寺院の解体修理プロジェクトにも参加され、現地スタッフと共に石材クリーニングなどを行ったそうです。


石造文化財の劣化原因や保存修復方法について、専門的な用語や技法を交えながらも分かりやすく指導いただきました。

*     *     *

つづいて、自治会館の外にある石造物で実際に補修ワークショップを行いました。
修復は、石造文化財専用の修復溶剤を使って行いました。


溶剤の性質上、水分が厳禁のため数日前から養生を施しました。座学の時には、激しい雨でしたが、養生した甲斐がありました。

養生した石造物

補修前の石造物
いよいよ、補修作業のはじまりです。まずは、対象の石造物の清掃を行います。石造物の笠を外すと、虫の死骸や砂埃が現れました。それを丁寧に掃除機で吸い取ります。


掃除終了後、講師の指示に従って、取り外した笠部分に補修溶剤を塗っていきます。石造物が溶剤を吸わなくなり、水たまりができるような状態にまで塗り続けます。


 本体部分にも同様に塗っていきます。


作業完了後、溶剤が乾燥し補修の効果がでるに2週間程かかります。(2週間後に使用した溶剤を確認したところ、しっかりと固まっていました。)

日ごろ、石碑や石造物の簡単な清掃をすることはあっても、補修作業は初めてという方がほとんでした。私自身も初めてであり、貴重な体験をすることができました。
(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)」の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。