2009年9月19日土曜日

突然の訃報に接して ― 「人形恒」こと田村恒夫さん ―

(写真1)展示中の歴代人形師の木偶
 今朝、『徳島新聞』の朝刊を開けてびっくりしました。

 人形師「人形恒」こと田村恒夫さんの訃報が掲載されていました。昨日(9月18日)、肺ガンで他界されたとのことです。

 田村さんには、1993年10月の当館開館の際、「中西仁智雄コレクション」の木偶人形修理をご担当いただくとともに、文化財展示室(木偶人形の展示室)の展示をご指導いただきました。

 現在展示されている歴代人形師の作品(写真1)も、すべて田村さんが演示具の取り付けを行いました。

(写真2)田村さん監修「人形浄瑠璃情報コーナー」
 また、田村さんは、阿波人形師の“技”を次代の子どもたちへ伝えることにも熱心で、館内奥の「人形浄瑠璃情報コーナー」(写真2)(“阿波木偶人形のしくみ”や“各種人形頭(かしら)の写真”などを展示)は、そのほとんどが田村さんの作品と監修によるものです。

 当館が人形浄瑠璃芝居に関する学習ビデオ教材を制作した際には、人形制作の実演も行っていただきました。ビデオカメラの前でも、いつもと同じように笑顔で、“技”の解説をしながら実際に頭を彫り、塗りを行ってくれました。1体の人形が完成するまで、数ヶ月にわたるビデオ取材に快く応じてくださいました。

(写真3)人形恒作「二人 三番叟」
 今、当館玄関ロビーに展示中の「二人 三番叟」(又平・三番叟)(写真3)は田村さんの作です。

 開館翌年に、当館の求めに応じて制作していただいたものです。「天狗久やデコ忠と一緒に収蔵されるんやけん、ええもん作らないかんわなぁ」と話されたことを、今も鮮明に思い出します。

 この1年間、私は電話で何度か田村さんとお話ししましたが、体調を崩されていることに全く気づきませんでした。ほんとうに突然の訃報でありました。

 数多のご恩・学恩に感謝の誠をささげるとともに、衷心からご冥福をお祈りいたします。

(主任学芸員 松下師一)