2013年8月14日水曜日

オーストラリアの「博物館」探訪記 〔その2〕

  
  7月29日(月)から8月7日(水)までの10日間、松茂町が主催する中学生ホームステイ事業(夢フライト国際交流事業)に随行して、オーストラリアへ出張しました。全行程が教育プログラムになっており、随所でミュージアムや動物園・植物園(日本の法律ならば、博物館に相当する施設)を見学しましたので、そのショートレポートを連載したいと思います。

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  第2回レポートも、飛行機の乗り換えで立ち寄ったオーストラリア北部・ケアンズ市にある「ケアンズ植物園」です。植物園は、日本の法律では「博物館」の範疇に入りますが、オーストラリアではどうなのでしょうか? その辺の事情はよくわかりませんが、まあ日本流に考えて、博物館の仲間と位置づけて、ショートレポートを執筆してみたいと思います。

  飛行機の乗り継ぎ時間を利用しての植物園見学です。

  植物園のパンフレットによりますと、もとは資産家のコレクションとして発足した施設のようですが、現在は公共施設として運営されているそうです。

  私は歴史系博物館の学芸員なので、植物に関する専門的な知識はありませんから、主にディスプレーや解説パネル・案内サインを注視してみました。

  下の案内パネルは、無料の案内ガイドのサービスを告知するものですね。週に4日、ウィークデーの午前中にガイドサービスがあるようです。また週1回は、早朝からバードウォッチングのガイドサービスがあるのにも、とても感心しました。この方法は、当館でも検討してみる価値があるように思いました。

  現地旅行代理店の日本人ガイドが、簡単な案内をしてくれました。ありがとう。

  オーストラリア北部は亜熱帯で、独特のシダ植物の巨木があります。有袋類と同じように、この地で生き残った太古の植物ですね。ふと、某ハリウッド映画で、日本の侍がシダ植物の密林から出てきたシーンが思い出され、この地でロケされたのではないかと思いました。現地の日本人ガイドに問うてみると、「そのロケ地はニュージーランドですよ! ニュージーも進化から取り残されたシダ植物の密林があるはずです。」とのことでした。

  やはり欧米文化の影響から、寄付を募る標柱が至る所に立っていました。しかもその標柱、よく見ると上部に小穴が開いており、コインを投入できる仕組みです。

  「生殖と死」という、刺激的な言葉のコーナータイトルディスプレーがありました。何でしょう?


  じゃ~ん、頭上を見上げると、小学生の頃に図鑑で見たウツボカズラが栽培されています。

  そう、食虫植物の特集コーナーでした。食虫植物といえば肉食なのですが、この解説パネルによると、一部の食虫植物は葉っぱを食べるベジタリアンだそうです。

  「暗黒面に墜ちる」というディスプレーです。やはりあのSF映画を意識しているのでしょうね。食虫植物に捕らわれると、昆虫たちは「暗黒面」に墜ちてしまいます。

  「食虫植物の罠には2種類ある」という解説パネルです。ハエトリグサの写真が印象的です。

  ハエトリグサに挟み込まれた昆虫の写真が展示されています。

  食虫植物の展示コーナーを通り抜けると、芭蕉(ばしょう)の木を見つけました。西遊記の芭蕉扇を思い出しますが、実際の芭蕉の葉っぱはバラバラに裂けており、とても扇になりそうには思えません。下の方の若葉なら、芭蕉扇になるのでしょうか。

  そして、花と実(バナナ)を見つけました。こんな姿なんだ。びっくりしました。

  植物園内で、歴史系の解説パネルを見つけました。オーストラリアの先住民族であるアボリジニが、熱帯雨林の植物を、道具・武器・食料・薬・繊維・建材に利用していたという説明です。シンプルですが、古写真があることから、パネルを制作した学芸員の意図を理解することができます。

  そして出口、やはり寄付を求める標柱が立っていました。

  ほぼ全て英語のパネルでしたが、文章が平易で、写真やイラストが効果的に配されていることから、凡その内容は理解することができました。この植物園が、教育施設・学習施設として、堅実に運営されていると思います。

  ちなみに、寄付を募る標柱には、英語とともに、漢字で「寄付」と書いてありました。日本人の善意に期待しているのでしょう。

(主任学芸員 松下師一)