今日は2010年の大晦日です。今年も学芸業務やら、『町誌』の編さんやら、地域史の研究やら、諸学会・諸研究のお手伝いやら、本当にいろいろありました。そんな1年間のうち、うっかり掲載し忘れた平成22年度阿波学会総合学術調査の古文書合宿(地方史研究班・徳島地方史研究会主催)について、ここでちょっと紹介しておきたいと思います。
夏の古文書合宿は、2010年8月2日(月)・3日(火)の両日、美馬郡つるぎ町一宇地域(旧・一宇村)で開催されました。旧・一宇村の役場(現在の役場支所)は、一宇地区の中心地の赤松という集落にあります。急峻な剣山系の山肌にへばりつくように集落は広がっています。
合宿の合間に、一番奥の集落・桑平地区まで行ってみました。8月の猛暑とはいえ、高山の気候は少し涼しく感じました。
旧・一宇村といえば、数多くの巨樹・巨木と、「土釜」「鳴滝」といった美しい滝の数々です。写真は「土釜」直下の清流の流れです。
さて、本論へ戻りましょう。今回、古文書調査の対象としたのは、支所(旧役場)の書庫です。写真のように支所屋上に増築された建物で、一見すると簡素な造りのように見えますが、内部は5室に分かれており、なかなか立派な施設です。
事前にお伺いした話によれば、江戸時代の古文書はおろか、明治時代の記録も無いということでしたが、実際、書庫内に入ってみると、長年の経験から“第六感”が働きます。
「やっぱりあるじゃないの。」と、私、少々重量オーバー気味ですが書架の最上部へよじ登ります。
明治時代の精緻な地積図(分間図)が発見されました。大きすぎて大会議室の床に広げないと全体が見渡せません。
同行の板東紀彦さん(徳島県立文書館主任専門員)が、同じく書庫内から江戸時代の「検地帳」と「棟附帳」を発見しました。旧・一宇地域の近世史解明の基礎となる、とても重要な古文書の数々です。
板東さんと町田さん(鳴門教育大学准教授)が保存状態を確認する横で、私と助手は撮影の準備です。
今回参加の助手君は、年少ながら古文書の扱いも適切で、なかなかの活躍ぶりでした。「検地帳」が納められていた木箱を丁寧に清掃し、調査記録や撮影が出来るように下準備をします。
2日目に調査した明治・大正時代の記録でも、綴じの痛みや落丁の有無を確認しながら清掃を進めます。よくがんばりました。
こうして調査した成果は、1月中旬までに原稿にとりまとめて事務局(徳島県立図書館)へ提出します。来年7月には、『報告書』として刊行・公開される予定です。
ちなみに私は、この合宿で発見・調査した江戸時代の「検地帳」をテーマに、ただいま年越しで原稿(短編)を執筆中です。
(主任学芸員 松下師一)