2014年8月23日土曜日

町指定無形民俗文化財「二上り音頭と回り踊り」

  
  毎年8月23日は、松茂町中喜来の呑海寺を会場に、「二十三夜」(主催:中喜来協議会)の祭礼が開催されます。せっかく視察に行ったのですが、うっかりカメラを忘れてしまい、手持ちのスマホで撮影してみました。


  境内中央に設けられた櫓の周囲を、踊り手が輪になって「回り踊り」をします。「阿波おどり」に代表される“行進踊り”のイメージが強い徳島県では、「回り踊り」はマイナーな印象です。


  櫓の上では、町指定無形民俗文化財「二上り音頭」が実演されます。太棹三味線を伴奏に、“音頭出し”が浄瑠璃くずし音頭を吟じます。近年、踊りやすいようにという考えから、拍子木を打つようになりましたが、本来は三味線と声(浄瑠璃くずし音頭)だけで踊っていました。


  櫓の中央、黒いTシャツの人物は、三味線に取り組む少年です。伝統芸能に取り組む若者がいること、とてもうれしいですね。


  一昨年から、吉野川市美郷の「廻り踊り」と交流しています。薄い青の法被が中喜来二上り音頭保存会、濃紺の法被が美郷廻り踊り保存会の面々です。


  美郷の保存会から、山岳信仰で行われている法螺貝の実演披露がありました。


  地元、喜来小学校の児童も参加して、踊りの輪は延べ1時間あまり(途中、数度の休憩あり)続けられました。


(主任学芸員 松下師一)

  

写真展 小笠原諸島 ― 世界自然遺産と鎮魂 ―

  
  今年度(平成26年度)、当館では、防衛省の「特定防衛施設周辺整備調整交付金」の交付を受け、地域の人材を活かした文化事業の充実を図っています。その一環として、8月5日(火)から、特別企画「写真展 小笠原諸島 ― 世界自然遺産と鎮魂 ―」を開催中です。
  ここでは、その様子を紹介します。


  今回の特別企画は、『松茂町誌』続編第3巻の編集に際し、徳島空港発着の航空機写真を提供くださった田中雅己氏とのご縁により、開催することになりました。田中氏は元・海上自衛官で、航空機写真の愛好家としてして知られていますが、現職当時に赴任した「小笠原諸島」の貴重な写真をお持ちでした。


  展示内容は大きく3部に分かれています。

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  第1部は、日本の最東端・南鳥島(みなみとりしま)です。面積1.5㎢しかない絶海の孤島ですが、海上自衛隊と気象庁の職員が常駐しています。この島を守ることにより、日本の排他的経済水域は43万㎢も広がります。


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  第2部は、小笠原諸島の中心地・父島母島です。平成23年(2011年)に、ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界自然遺産に登録され、その美しく、貴重な自然は世界中から注目されています。


  展示スペースの都合上、母島の展示は、ちょっと離れた場所にあります。


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  第3部は、第二次世界大戦の激戦地・硫黄島(いおうとう)です。日米両軍あわせて3万人近い戦没者があり、数多くの戦跡(せんせき)が残ります。


  硫黄島の写真は数が多いため、前編・中編・後編に分かれています。
  まずは前編「名勝と戦跡」の紹介で、昭和20年(1945年)2月~3月の激戦(硫黄島の戦い)の戦跡が続きます。


  展示ボードの角を曲がると、戦没者等の顕彰碑を紹介したコーナーです。中には、摺鉢山の山頂碑を訪れた小泉元総理の写真もあります。


  そして、奇岩や特徴的な風景など、島の名勝を紹介するコーナーです。島名の由来になった“硫黄”に関わる名勝が多いですね。


  がらりと雰囲気が変わって中編です。「遺骨収集と鎮魂」をテーマにしています。
  戦後70年近くたった今も、毎年遺骨収集が行われており、荼毘(だひ)に付された遺骨は、東京の千鳥ヶ淵戦没者墓苑に納骨されています。


  後編は、海上自衛隊を中心とする「在島業務」と、貴重な「自然」を紹介します。


  展示の最後は、北硫黄島と南硫黄島の紹介です。


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  この展示は、9月7日(日)まで開催します。観覧無料、ぜひご覧ください。

  なお、この展示は好評につき、若干の会期延長を検討中です(8月23日現在)。延長が正式に決まりましたら、ホームページ等でお知らせします。

(主任学芸員 松下師一)