私もそうしているのですが、「裏導線」を案内する際には、資料の受け入れ手順に従って案内するのが一番良いと思います。群馬の岡田次長さんもそうされました。搬入口から、仮置き場、燻蒸庫、史料整理室、収蔵庫(書庫)へと、見学は進みます。
ところで、見学中、私が感心したのは、各所に置いてある温湿度計です。ついつい空調機任せになりがちですが、群馬県立文書館では搬入口・仮置き場なども含めて、あらゆる所に温湿度計があり、職員の目に触れる仕掛けができていました。ぜひ松茂の資料館でも、この仕掛けを導入したいと思います。
減圧式の燻蒸庫です。文字史料を扱うには、これぐらいのサイズが最適でしょう。
もう一つ感心したのは、スタッフ全員、白衣であることです。確かに埃まみれの史料を扱うことから、実用面も有効なのですが、なにより学術機関・研究機関として、アカデミックな気風が生まれますよね。すばらしい。
そして収蔵庫(書庫)です。群馬県立文書館は、『群馬県史』編さん室の系譜を引くため、古文書類の書庫に始まり、途中、公文書受け入れのために大増築したとのことです。そのため、書庫は本館と増築部分、10数室に分かれており、ちょっと複雑な配置になっています。
まずは、明治以降の群馬県庁の行政文書を収蔵した書庫ですね。
この書庫に収められた「群馬県行政文書」(下の写真)は、2010年7月に国の重要文化財に指定されています。全国の役所で日々、次々と起案・決裁される公文書は、将来、歴史的・学術的に貴重な文化財になるかも知れませんね。公文書の公共財・文化財としての一面を、再確認しておきたいと思います。
別の書庫に移動しました(下の写真)。この書庫は集密書架では無く、固定式の書架になっています。前近代の古文書を収めた書庫です。
古文書は、中性紙段ボールを使用した特注の箱に納められています。書棚の高さを考慮した、背の低い箱で、各段に2つ重ねて置かれています。ちなみに、松茂町歴史民俗資料館の古文書収納箱は、同様に棚の高さを基準としましたが、背の高い設計で、格段に1つです。
見学した書庫の最後は、「紙焼き本」の書庫です(下の写真)。たぶん「紙焼き本」は業界用語なので解説すると、古文書などを撮影したマイクロフィルムを紙状の印画紙(かつての三菱CH印画紙など)に現像し、それを上製本したものです。
B5判横綴じ上製本の冊子が、ずらりと並ぶ書架は壮観で、何度見ても感動します。ちなみに、背のクロスの色(青・黄・緑)は、被写体となっている古文書の時代によって区別されています。
松茂町歴史民俗資料館にも、古文書・古記録を撮影したマイクロフィルムやデジタル媒体はたくさんあります。それを単に所蔵するのでは無く、有効活用するためにも、「紙焼き本」を揃えていく必要があると思いました。(つづく)
(主任学芸員 松下師一)