2015年12月19日土曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第5回)開催記録


12月12日、資料館研修室にて講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第5回目が開催されました。

【概要】
 講 師:町田 哲氏(鳴門教育大学准教授)
 演 題:「地域の文化遺産を守り伝えること ~徳島史料ネットの活動から~」

町田氏は、平成24年(2012)に設立された「歴史資料保全ネットワーク・徳島」(略称徳島史料ネット)の会員として活動されています。


講演では、徳島県における歴史文化をめぐる課題や、平成26年8月の台風災害と巡回調査の事例を踏まえて、実際に阿南市や海陽町で行った水損史料の救出活動の報告が行われました。

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講演後には、襖の下張り文書を剥がすワークショップが開催されました。襖の下張りには、江戸時代の古文書や明治時代に文書が貼り付けられていることが多く、貴重な史料のひとつです。


講師の指導のもと、史料を1枚1枚剥がしていきます。皆さん初めての体験であり、史料を破ってしまわないか不安な面持ちで、作業を行いました。


剥がした史料は1枚ずつ新聞紙に包んで乾燥させます。何層にも重ねられた史料を剥がすのは大変な作業です。


皆さんは、作業にも慣れ時間いっぱいまで作業を行っていただきました。

全5回の石碑講座は、無事に終了しました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございます。今後、受講生の皆さんには、町の文化財保存活動に参加していただきます。
(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化振興費補助金)」の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。

2015年12月18日金曜日

徳島県博物館協議会研修会参加記


12月8日に開催された、徳島県博物館協議会の研修会に参加してきました。
会場は、吉野川市にある阿波和紙伝統産業会館(http://www.awagami.or.jp/)です。

産業会館の外観
はじめに、講演会がおこなわれました。

 工藤 多美子氏(阿波和紙伝統産業会館)
  演題「アートとの取り組み―和紙作りの現場から―」

産業会館には、海外から多くのアーティストが作品に使用する和紙を制作しに訪れるそうです。日本で作られた和紙が、海外の作品に使われているのには驚きました。
また、アメリカからは美大生を受け入れ、原材料の楮の収穫から和紙制作までの工程を体験する研修会などを開催しているそうです。

近年では、平成26年には、「石州半紙」(島根県浜田市)、「本美濃紙」(岐阜県美濃市)、「細川紙」(埼玉県小川町、東秩父村)が、ユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、大変興味深い内容の講演でした。

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つづいて、館内見学と手漉き体験をしました。

館内を説明する工藤氏
1階にある作業スペースでは、紙漉き職人たちが企業などから発注を受けた和紙を制作していました。いろいろな紙の寸法に対応するため、大小さまざまな道具を使って紙漉きを行います。
和紙に模様をつける作業
上から細かい水を吹き付け、独特の模様をつける技術はまさに職人技です。
乾燥機を通過中の和紙
紙漉体験ではハガキを作ることができました。伝統の技法で行う紙漉きは、ハガキサイズとはいえなかなか難しいものです。みなさん楽しみながらも、真剣な面持ちで紙漉きを体験しました。
紙漉き体験
できあがった和紙に色や模様を付けて、それぞれの作品が完成しました。
個性豊かなハガキたち
紙漉体験ではハガキサイズの他に、半紙判や3時間の自由制作を体験できるコースもあります。
興味のある方は、ぜひ体験してみてください。

自分で紙漉きをしたハガキで、年賀状を作るのも風情があってよいかもしれませんね。

(学芸員 菅野 将史)

2015年11月29日日曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第4回)開催記録


11月22日、講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第4回目が開催されました。今回は、町内に遺る石碑・石造物を実際に見て回る石碑めぐりのフィールドワークを行いました。

【概要】
講 師:松下 師一氏(町文化財保護審議会委員)
内 容:フィールドワーク「町内石碑巡り」


資料館研修室にて順路を確認したのち、フィールドワークに出かけました。主な順路は、豊久地区から長原地区にかけて巡り、徳島市川内町まで足を伸ばしました。


まずは、町の北東部に位置し徳島阿波おどり空港近くにある、豊久開基碑を確認しました。講師の解説後、受講生で銘文を読んでみました。


続いては、豊岡神社境内に立つ豊岡開拓碑と、阿波・淡路の特色ある石碑のひとつ五角柱の地神塔(通称地神さん)を巡りました。

豊岡
地神塔(通称地神さん)は、寛政元年(1789)に阿波藩第11代藩主蜂須賀治昭が、阿波・淡路の庄屋に、地神塔を建て春秋の社日に地神祭を行うよう命じたことが起源とされています。

地神塔(地神さん)
長原地区の住宅地に立てられている阪東熊八郎の碑や、徳島市川内町にある台湾・製糖事業の碑へも足を運びました。

阪東熊八郎の碑
台湾・製糖事業の碑
天気にも恵まれ、皆さんも散歩気分で石碑めぐりを終え大変満足そうでした。
フィールドワークで歩くことができなかった地域にも、数多くの石碑・石造物が遺っています。散歩がてら文化財散策を楽しんでみるのもいかがでしょうか。
(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)」の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。

2015年11月28日土曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第3回)開催記録


11月8日、講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第3回を、松茂町中喜来にある向喜来自治会館にて開催しました。当日は、あいにくの雨により補修ワークショップの開催が危ぶまれましたが、無事に行うことができました。

【概要】
講 師:魚島純一氏(奈良大学教授)
演 題:「石造文化財の劣化と保存」
ワークショップ:石造物補修

まずは、自治会館内で座学を行いました。内容は、魚島先生がこれまでに国内外でおこなった石造物の補修作業の事例や、石造物が劣化する要因などです。


カンボジアのアンコールワット遺跡群にある西トップ寺院の解体修理プロジェクトにも参加され、現地スタッフと共に石材クリーニングなどを行ったそうです。


石造文化財の劣化原因や保存修復方法について、専門的な用語や技法を交えながらも分かりやすく指導いただきました。

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つづいて、自治会館の外にある石造物で実際に補修ワークショップを行いました。
修復は、石造文化財専用の修復溶剤を使って行いました。


溶剤の性質上、水分が厳禁のため数日前から養生を施しました。座学の時には、激しい雨でしたが、養生した甲斐がありました。

養生した石造物

補修前の石造物
いよいよ、補修作業のはじまりです。まずは、対象の石造物の清掃を行います。石造物の笠を外すと、虫の死骸や砂埃が現れました。それを丁寧に掃除機で吸い取ります。


掃除終了後、講師の指示に従って、取り外した笠部分に補修溶剤を塗っていきます。石造物が溶剤を吸わなくなり、水たまりができるような状態にまで塗り続けます。


 本体部分にも同様に塗っていきます。


作業完了後、溶剤が乾燥し補修の効果がでるに2週間程かかります。(2週間後に使用した溶剤を確認したところ、しっかりと固まっていました。)

日ごろ、石碑や石造物の簡単な清掃をすることはあっても、補修作業は初めてという方がほとんでした。私自身も初めてであり、貴重な体験をすることができました。
(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)」の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。

2015年11月7日土曜日

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第2回)開催記録




10月31日、資料館研修室にて、講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第2回が開催されました。

【概要】
 講 師:西本 沙織氏(徳島市教育委員会)
 演 題:「徳島の石造物と石材について」

徳島県の代表的な石材である「阿波の青石」とも呼ばれる結晶片岩などの石材について、利用の歴史的変遷事例などを交えて紹介されました。


徳島県内に遺る宝篋印塔や五輪塔などの写真から、石碑の種類や造られた年代を推定する方法などを学びました。


町内に遺る「豊岡開拓碑(町指定有形文化財)」などは、和泉砂岩(撫養石とも)と呼ばれる石材で造られています。この石材は、碑文を彫ることが容易である反面、風化が早く剥離しやすいといった問題も抱えています。

「豊岡開拓碑」についても、すでに明治時代末期には表面の一部が、はがれ落ちていたようです。

豊岡開拓碑(とよおかかいたくひ)

次回、第3回では、魚島純一氏(奈良大学教授)の講演と石碑の補修実演ワークショップを開催します。

(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。

2015年10月31日土曜日

特別企画「春藤嘉雄氏 漆喰絵画展」の記録


平成27年10月6日(火)から本日31日(土)まで、当館にて特別企画「春藤嘉雄氏 漆喰絵画展」を開催しました。

松茂町在住の左官兼芸術家の春藤嘉雄氏が、鏝(こて)を使用して描いた数多くの「漆喰絵画」を展示しました。

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会期中には、町内の方はもとより、町外や県外からも多くのお客様にご来館いただき、まことにありがとうございます。


春藤氏ご本人による展示解説は、連日大盛況でした。


また、徳島白菊特攻隊を語り継ぐ会の山下釈道代表もご来館なさり、機上作業練習機「白菊」の作品の前で、春藤氏ご本人から戦争体験や白菊特攻隊の話を、熱心に聞かれておりました。


なお、明日11月1日(日)から、一部展示替えを行い〈第2部〉を開催いたします。〈第2部」では、鳴門市に飛来したことで話題の「コウノトリ」の新作も展示します。ぜひ、ご覧ください(観覧無料)。

※平成27年度松茂町歴史民俗資料館では、防衛省「特定防衛施設周辺整備交付金」の助成により、住民参加型文化事業を担当する非常勤職員が配置され、「協働」をキーワードに各種展示や文化イベント等を行っています。

(学芸員 菅野 将史)

2015年10月24日土曜日

松茂中学校2年生職場体験の記録


10月20日~21日まで、松茂中学校2年生の生徒3名が、当館で職場体験学習を行いました。

学芸員として3名は、人形浄瑠璃の演目「仮名手本忠臣藏」の番付について調査してみました。

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はじめて見る"番付"に悪戦苦闘しながらも、資料の特徴や魅力を発見することができました。


その成果として、ミニコーナー展示「解説 松中女子が学んだ浄瑠璃の世界~番付の豆知識~」として、資料や解説用パネルを展示しました。


展示する位置を決めるのも大変です。

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無事に完成しました。3名が一生懸命調べたことが、豆知識として解説されています。


なお、ミニコーナ展示「解説 松中女子が学んだ浄瑠璃の世界~番付の豆知識~」は、文化財展示室前のコーナーで展示中です。ぜひ、ご覧ください。
(学芸員 菅野将史)

講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」(第1回)開催記録


10月17日に、松茂町文化遺産活用実行委員会主催の講座「石碑に学ぶ松茂の歴史」の第1回目が、資料館研修室にて開催されました。


講 師:松下師一氏(町文化財保護審議会委員)
内 容:「石碑に学ぶ郷土の歴史―松茂町内と、松茂ゆかりの地をたずねて―」


松茂町内に遺る石碑を中心とした文化財を、写真や地図で紹介しました。


町内には、「豊久開基碑」(町指定有形文化財)など新田開発の記録が記された石碑や、江戸時代末期に発生した安政南海地震の悲惨な状況を刻んだ「敬渝碑」があります。


地元松茂に長年住んでいる受講生でも、なかなか気づくことのできない場所にある石碑も紹介されました。今回紹介された石碑を、第4回のフィールドワークでめぐる予定です。

普段何気なく歩いている道に、ぽつりとある石碑やお地蔵さんに興味をもって見てみてください。きっと新たな発見があると思います。

(学芸員 菅野 将史)

※本事業は、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館に事務局を置く、松茂町文化遺産活用実行委員会が、文化庁「文化遺産を活かした地域活性化事業(文化芸術振興費補助金)」の助成を受け、文化遺産を保護・啓発する人材育成事業の一環として行っています。

2015年10月19日月曜日

県文審連45周年記念大会参加記


今日は、徳島市生涯福祉センター(ふれあい健康館1階ホール)で開催された、「徳島県市町村文化財保護審議会連絡協議会 創立45周年記念大会」に、町文化財保護審議会委員のみなさんと参加しました。

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はじめに、創立45周年記念大会ということで記念式典がおこなわれました。
会場は、県内24市町村の文化財保護審議会委員の方々や一般の参加者で、満席状態でした。

記念式典では、まず、沖田定信会長があいさつを行いました。



続いて、来賓の飯泉嘉門徳島県知事より祝辞をいただきました。



記念式典を無事に終え、次に記念講演が行われました。

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最初の報告は、徳島大学大学院教授(徳島県文化財保護審議会会長)の石田啓祐氏で、演題は「徳島県内の天然記念物の保存と活用」です。


石田氏は、「事象とパラダイムの変化を把握し、次世代と内外に向けて保存・活用するために」をキーワードに、県内外の天然記念物や海外の事例を挙げ、徳島県の文化財資源は豊富であることと、歴史・文化・産業などが一体となった取り組み例を紹介されました。


続く2人目の報告は、大阪府文化財センター理事長の田辺征夫氏で、演題は「古代寺院遺跡の整備と地域の活性化」です。


田辺氏は、史跡の整備をめぐる問題や活用の仕方を、寺院遺跡の活用例などを挙げ紹介されました。また、報告の中で、「我々の仕事は、遺跡を日常生活の中に取り戻し、文化財を文化にする作業をしている。」とまとめておりました。

文化財の整備活用について学ぶことができ、充実した大会でした。

(学芸員 菅野 将史)

2015年9月24日木曜日

中国・四国ブロック民俗芸能大会へ行ってきました。(その3)


9月20日(日)、いよいよ大会当日を迎えました。
当日は天気にも恵まれ、開演前から多くの観劇客が訪れていました。

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ホール前には、各県のPRブースが置かれており、徳島県のブースも発見しました。
ブースには、鳴門の渦潮やお遍路を浮世絵仕立てで紹介したポスターなどがありました。
我が松茂町からは、資料館のパンフレットやスカイフェスタのチラシを持ち込み、しっかりとPR活動を行ってきました。

徳島県のPRブース
資料館パンフレット(写真中央)
ちなみに、開催地の島根県は、なにやら島根県観光プロモーション『ご縁の国しまね』のPRキャラクターにEXILEのメンバーを採用しているらしく、ポスターやPR映像を使用して宣伝を行っており、驚かされました。

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開会式も無事に終わり、民俗芸能大会のはじまりです。
ふれあい座は、2番目の出演ということもあり、トップバッターの佐陀神能保存会(島根県松江市)の神楽を、舞台袖から緊張の面持ちで見つめていました。

そして、いよいよふれあい座の出演です。

 

大勢の観劇客の前で、「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」を上演しました。


人形を操る三人の息もぴったりと合い、観る者を魅了していました。なかには、涙を流しながら観劇してくれた人もいたようでした。
上演終了後には、会場から盛大な拍手が湧き、ふれあい座の上演は大成功です。

ふれあい座は、来年度高知県で開催される「第58回中国・四国ブロック民俗芸能大会」への連続出場を目指し、日々”技”を磨いています。今後とも、ご支援よろしくお願いします。

(学芸員 菅野 将史)