2013年3月9日土曜日

ここ数日の悩み?

    
  先週から、未整理文書群の整理に着手しました。整理途中の文書群を含め、目録化できていない文書群は複数あるのですが、松茂史談会メンバーのボランティア協力を得ながら、徐々に成果を出していきたいと思います。

  かくも意欲的なのに、現実は厳しいです。下記の古文書のキーワードが読めないのです。というか、文字としては読めるのですが、意味がわからないのです。



  意味がわからないのは、真ん中の行の上部です。「市皮へぎ居申」と書いてありますが、「市皮」とは何でしょうか?



  「市皮」の部分は、最初「市波」かと思ったのですが、この文書の他の部分に出てくる「彼」の字と比較分析すると、「皮」で間違いないようです。

  「へぎ」は阿波の方言で「剥ぎ」なので、「市」の皮を剥ぐという意味なのでしょうか。だとすれば、その「市」が何かわかりません。試しにグーグルで「市皮」を検索してみると、革靴の部材がヒットしましたが、江戸時代の松茂に革靴なんかあるわけありません。

  古文書を読み進めると、「市皮」で「しぶき」とも記されています。「しぶき」も方言で「しばく」の類だと思われるので、素早く叩くことができるものです。

  現状の推理としては、2つあります。

【その1】イチノキの樹皮か?
  「市」の発音は「イチ」だから、「イチ」という植物の皮だろうと考えて、「イチノキ」の樹皮だろうと推定するものです。「イチノキ」は「櫟の木」で、「イチイガシ」の別名です。この木は、建築や建具の材料によく使われるので、きっと江戸時代の松茂でも樹皮のついた丸太を持ち込んで、樹皮剥ぎや製材をしたのではないかと想像するのです。

【その2】イチビの皮か?
  「市皮」を「イチ・ヒ」と考えて、「イチビ」という植物(背丈1メートルほどの一年草)と推定するものです。イチビは外来種ですが、繊維をとる植物として中世以前から国内で栽培されていたそうです。繊維を剥ぎ、「しぶき」(叩き)したという使用法から考えて、可能性の高い推理です。でも、江戸時代の松茂に、この外来種は栽培されていたのでしょうか。はなはだ疑問です

  ちなみに、専門的な加工技術が必要な動物由来の皮とは考えにくいですね。

  現時点では、いずれの推理ともに、まったく自信がありません。ほんと「市皮」とは何でしょうか。もしかして、文字そのものの読み違えでしょうか。思い当たる方は、ぜひ教えてくださいね。

(主任学芸員 松下師一)