2013年10月9日水曜日

「1日学芸員」(喜来小学校6年生職業体験)

 
  先月(9月)25日に、喜来小学校の6年生3名が、当館で職業体験をしました。言うなれば、「1日学芸員」ですね。

  3名は、歴史担当の学芸員として、同校の校長室に掲示されている肖像写真の人物について調べてみました。

*                *               *

  調査を終えると、展示用の解説パネルを作成します。プリントアウトしたキャプションを、スチロールのボードに貼り込み、四辺をカッターで切りそろえます。3名はカッターナイフに苦戦中です。

  完成した解説パネルとキャプションを、臨時展示コーナーに展示します。

  「うまく掲示できたかな?」

  何とか完成しました。肖像写真の人物は、戦前に喜来小学校を卒業した人物で、阿波商業銀行(現在の「阿波銀行」)の頭取をつとめた三木寛治さんでした。当館所蔵資料の中から、三木寛治さん縁(ゆかり)の資料も探し出し、それも一緒に展示しています。

  「1日学芸員」喜来小学校6年生3名が担当した展示コーナーは、12月27日(金)まで展示する予定です。ぜひご覧ください。

    ※ 三木十五郎さん(三木寛治さんのご親戚)から、寛治さん執筆の書籍をお貸しいただきました。一緒に展示しています。ありがとうございました。

(主任学芸員 松下師一)

    

2013年10月1日火曜日

松茂小学校6年生の総合学習

      
  松茂小学校の6年生が、2学期から、「総合的な学習の時間」の課題として、「人形浄瑠璃芝居」を取り上げています。

  9月5日(金)には、松茂小学校の体育館で、地元・ふれあい座による上演会が行われました〔下記の写真〕


  10月1日(火)には、6年生全員が当館を見学し、人形浄瑠璃芝居や阿波国(徳島県)の歴史について学びました。

  幅広く、多様な学びへの取り組みです。最後に、どんな形でまとまるのか、とても興味深く思っています。

(主任学芸員 松下師一)

2013年9月14日土曜日

オーストラリアの「博物館」探訪記 〔その4・最終回〕

  
  7月29日(月)から8月7日(水)までの10日間、松茂町が主催する中学生ホームステイ事業(夢フライト国際交流事業)に随行して、オーストラリアへ出張しました。全行程が教育プログラムになっており、随所でミュージアムや動物園・植物園(日本の法律ならば、博物館に相当する施設)を見学しましたので、そのショートレポートを連載したいと思います(今回が最終回です)。

*          *          *

  これまで3回のレポートはクイーンズランド州だったので、今回はニューサウスウェールズ州の小さな歴史博物館です。私たちはクイーンズランド州からニューサウスウェールズ州へ移動し、ケンプシーという小さな街のハイスクールで4日間の交流事業(授業参加やホームステイ)を行い、帰路も同州マウルンバ市(Murwillumbah)郊外でファームステイを体験しました。今回のレポートは、その自由時間を利用して、マーウィルンバ市中心部にある「ツイードリバー博物館」へ出かけた時の様子です。

  マーウィルンバ市は、ニューサウスウェールズ州の北東部・ツィードリバー地域の中心地で、整然とした街並みの中に行政庁舎や裁判所があります。町外れには、小さな飛行場もあるそうです。

  宿泊したホテルのオーナーのお勧めで、風光明媚な丘を経由して、歩いて歴史博物館を目指します。


  さすがお勧めの丘、眼下に美しい風景が広がります。天気も最高に素晴らしいです。

  ツイードリバー地域は、ニューサウスウェールズ州と言っても、亜熱帯のクイーンズランド州に接しており、登山道の両側には亜熱帯ぽい植物がちらほらと見えます。


  丘の頂上まで登ると、小屋が見えてきました。


  なんと小屋は、誰でも利用できる公設のバーベキューサイトでした。近寄ってみると、まだサイトは暖かく、誰かが使用した後のようです。平日の早朝、誰が使用したのでしょう。


  正解は、ちょうど山頂のタンク(たぶん上水道の配水タンク)の屋根で工事をしており、彼ら作業員がブレックファーストを楽しんだようです。朝、仕事前にバーベキューとは、さすがオージー(粋なオーストラリア人)!


  頂上を一周し、反対側へ降りようとすると、展望台があります。脚を運ぶと、有名なマウントワーニング(オーストラリアの国立公園)が一望できます。世界史で習ったキャプテンクックが、オーストラリア大陸上陸から程なく、その不気味な山頂の形状を見て、「マウントワーニング(警告山)」と命名したそうです。


  木陰から、ツイードリバー(ツイード川)とマーウィルンバの街が、とても美しく見えます。


  さあ、丘を下ると歴史博物館があるはずです。


  到着! ここが、ツイードリバー地域の歴史博物館です。美しい緑の看板に、「Tweed River Regional Museum」「Home of Murwillumbah Historical Society」とあります。

  ・・・が、何だか様子が違う?


  あっ~! なんだって、「expansion(拡張)」のため、2013年度は「closed(閉鎖)」と書いてある!

  が~ん。アンラッキー、うそだろう~。せっかく来たのに・・・。


  というわけで、このレポートの最終回は、楽しみに訪問した歴史博物館が、なんと“臨時休館”だったという笑い話でおしまいです。

(主任学芸員 松下師一)

  
  

2013年8月18日日曜日

オーストラリアの「博物館」探訪記 〔その3〕

  
  7月29日(月)から8月7日(水)までの10日間、松茂町が主催する中学生ホームステイ事業(夢フライト国際交流事業)に随行して、オーストラリアへ出張しました。全行程が教育プログラムになっており、随所でミュージアムや動物園・植物園(日本の法律ならば、博物館に相当する施設)を見学しましたので、そのショートレポートを連載したいと思います。

*          *          *

  第3回レポートは、オーストラリア北東部・クイーンズランド州ゴールドコースト郊外にある「カランビン野鳥園」の教育事業です。

  私たち一行は、29日(月)夜に関空を飛び立って、翌30日(火)朝にケアンズ着、それから国内線に乗り換えて、同日午後にゴールドコースト空港に着きました。目指すニューサウスウェールズ州ケンプシー市は、それからバスに乗り換えて9時間程かかるので、その日はゴールドコーストで一泊です。

  「カランビン野鳥園」は、邦訳は「野鳥園」ですが、本来の英語は「Wildlife Sanctuary」ですから「野生生物保護区」と理解するのがよいでしょう。広大な保護区の一部に動物園が設けられており、今回見学・体験したのは動物園の部分だけです。

  園内に入り、木の上を見上げると、なんだかモコモコしたものがあります。

 そう、モコモコの正体は、すべてコアラでした。なんと、すごい数ですね。

 動物園の展示方法は、近年の日本と同様で、部分的に環境を復元したオープンスペースで飼育しているようです。

 オーストラリアの国の紋章にもデザインされているエミューですね。

 一部の動物は、来園者とふれあえるように、広場に放されていました。赤カンガルーも、体を横にしてくつろいでいましたが、ちょっと大型で近寄りがたい雰囲気です。

  そう思っていると、私の近くをワラビーの母子が通り過ぎていきました。

 広場の横にはフェンスで囲まれた池があり、クロコダイルが日向ぼっこしています。(当たり前ですけど、フェンスの向こうです。ふれあえません。)

 うーん、名前はわからないけど、巨大な緑のトカゲもいます。

 そして、池の中央には、全長10メートルを超える巨大なクロコダイルがいました。でかい!

 池を見回しながら高台に上がると、ガラスで仕切られた展示コーナーが並び、その一つでウォンバットが食事中でした。ガイドによると、夜行性なので、日中に行動していることは珍しいそうです。とてもラッキーでした。

 園内の散策を終えると、さあ、動物園の教育プログラム(飼育体験)の開始です。コアラ展示コーナーの前に集合して、日本語を話す園のスタッフがガイダンス(事前説明)をします。

 そしてエデュケイター(教育活動専任の学芸員)登場! ゆっくりと平易な英語(ただし、オーストラリアなまり有り)で、コアラの生態や飼育の要点などを解説します。
 私も当館の学芸員として、いろんな場面で解説をしますが、わかりやすい言葉づかいができているか、とても考えさせられました。

 「なんだ、なんだ。何が始まるんだ。」と、心配そうに(不思議そうに)見つめるコアラさん。

 松茂中学生による飼育体験開始。体験内容は、飼育広場の清掃(フンの掃除)と、餌やり(新鮮なユーカリを偽木に挿す)です。

 見慣れない「一日飼育員」たちに、びっくりしているコアラの母子。

 「・・・・・・・。」

 最後、小屋に集合して、体験学習のまとめです。コアラの保護や、人間と自然との関わりについて学びました。エデュケーターさん、日本語スタッフさん、ありがとうございました。

 なお、この園では、オプションとしてコアラをだっこして写真が撮れます(別料金サービス)。なんでも、クイーンズランド州ではだっこOKだそうです(ニーサウスウエールズ州では不可)。

(主任学芸員 松下師一)

2013年8月14日水曜日

オーストラリアの「博物館」探訪記 〔その2〕

  
  7月29日(月)から8月7日(水)までの10日間、松茂町が主催する中学生ホームステイ事業(夢フライト国際交流事業)に随行して、オーストラリアへ出張しました。全行程が教育プログラムになっており、随所でミュージアムや動物園・植物園(日本の法律ならば、博物館に相当する施設)を見学しましたので、そのショートレポートを連載したいと思います。

*          *          *

  第2回レポートも、飛行機の乗り換えで立ち寄ったオーストラリア北部・ケアンズ市にある「ケアンズ植物園」です。植物園は、日本の法律では「博物館」の範疇に入りますが、オーストラリアではどうなのでしょうか? その辺の事情はよくわかりませんが、まあ日本流に考えて、博物館の仲間と位置づけて、ショートレポートを執筆してみたいと思います。

  飛行機の乗り継ぎ時間を利用しての植物園見学です。

  植物園のパンフレットによりますと、もとは資産家のコレクションとして発足した施設のようですが、現在は公共施設として運営されているそうです。

  私は歴史系博物館の学芸員なので、植物に関する専門的な知識はありませんから、主にディスプレーや解説パネル・案内サインを注視してみました。

  下の案内パネルは、無料の案内ガイドのサービスを告知するものですね。週に4日、ウィークデーの午前中にガイドサービスがあるようです。また週1回は、早朝からバードウォッチングのガイドサービスがあるのにも、とても感心しました。この方法は、当館でも検討してみる価値があるように思いました。

  現地旅行代理店の日本人ガイドが、簡単な案内をしてくれました。ありがとう。

  オーストラリア北部は亜熱帯で、独特のシダ植物の巨木があります。有袋類と同じように、この地で生き残った太古の植物ですね。ふと、某ハリウッド映画で、日本の侍がシダ植物の密林から出てきたシーンが思い出され、この地でロケされたのではないかと思いました。現地の日本人ガイドに問うてみると、「そのロケ地はニュージーランドですよ! ニュージーも進化から取り残されたシダ植物の密林があるはずです。」とのことでした。

  やはり欧米文化の影響から、寄付を募る標柱が至る所に立っていました。しかもその標柱、よく見ると上部に小穴が開いており、コインを投入できる仕組みです。

  「生殖と死」という、刺激的な言葉のコーナータイトルディスプレーがありました。何でしょう?


  じゃ~ん、頭上を見上げると、小学生の頃に図鑑で見たウツボカズラが栽培されています。

  そう、食虫植物の特集コーナーでした。食虫植物といえば肉食なのですが、この解説パネルによると、一部の食虫植物は葉っぱを食べるベジタリアンだそうです。

  「暗黒面に墜ちる」というディスプレーです。やはりあのSF映画を意識しているのでしょうね。食虫植物に捕らわれると、昆虫たちは「暗黒面」に墜ちてしまいます。

  「食虫植物の罠には2種類ある」という解説パネルです。ハエトリグサの写真が印象的です。

  ハエトリグサに挟み込まれた昆虫の写真が展示されています。

  食虫植物の展示コーナーを通り抜けると、芭蕉(ばしょう)の木を見つけました。西遊記の芭蕉扇を思い出しますが、実際の芭蕉の葉っぱはバラバラに裂けており、とても扇になりそうには思えません。下の方の若葉なら、芭蕉扇になるのでしょうか。

  そして、花と実(バナナ)を見つけました。こんな姿なんだ。びっくりしました。

  植物園内で、歴史系の解説パネルを見つけました。オーストラリアの先住民族であるアボリジニが、熱帯雨林の植物を、道具・武器・食料・薬・繊維・建材に利用していたという説明です。シンプルですが、古写真があることから、パネルを制作した学芸員の意図を理解することができます。

  そして出口、やはり寄付を求める標柱が立っていました。

  ほぼ全て英語のパネルでしたが、文章が平易で、写真やイラストが効果的に配されていることから、凡その内容は理解することができました。この植物園が、教育施設・学習施設として、堅実に運営されていると思います。

  ちなみに、寄付を募る標柱には、英語とともに、漢字で「寄付」と書いてありました。日本人の善意に期待しているのでしょう。

(主任学芸員 松下師一)

2013年8月13日火曜日

オーストラリアの「博物館」探訪記 〔その1〕

  
  7月29日(月)から8月7日(水)までの10日間、松茂町が主催する中学生ホームステイ事業(夢フライト国際交流事業)に随行して、オーストラリアへ出張しました。全行程が教育プログラムになっており、随所でミュージアムや動物園・植物園(日本の法律ならば、博物館に相当する施設)を見学しましたので、そのショートレポートを連載したいと思います。

*          *          *

  まず第1回のレポートは、飛行機の乗り換えで立ち寄ったオーストラリア北部・ケアンズ市の郊外にある「キュランダ高原列車博物館」です。

 この博物館は、当初から私たちの視察先として予定されていたのではなく、7月30日(火)の朝食会場が同列車フレッシュウォーター駅構内のレストランだったため、食後の空き時間を利用して、レストランに隣接する小さな博物館を見学したというものです。

 レストラン横の小さな小屋が、博物館になっています。

 小さいですが、「ミュージアム(博物館)」という看板は立派です。

 館内に入ると、往時を偲ぶ古い道具類の背景に、立体的な風景画が描かれています。思ったより、教育効果・学習効果を考えた展示手法に驚きました。建物は小さくても、思いのほか魅力的な博物館です。

 額装された解説文には、キュランダ高原列車の歴史が紹介されています。もともは、金鉱石を掘削するための鉱山鉄道として敷設されたようです。

 壁面を埋め尽くす古写真のディスプレイも立派ですし、何より五感に訴える魅力にあふれています。

 谷を跨ぐ大橋梁の模型も、雰囲気がよく出ています。

 何より感心したのが、このジオラマ!

 私は土地勘がないので、このジオラマの緻密さがわかりませんが、その努力の程は伝わります。

 出口へ進むと、駅のホームへ出ました。

 1日1往復、この駅に列車がやって来ます。今は、往年の鉱山列車ではなく、観光用の旅客列車が、はるか山にあるキュランダ駅との間を走ります。

(主任学芸員 松下師一)

----------------------------------------

※追伸
 帰国後、この鉄道(キュランダ高原列車)のホームページを見ると、この鉄道を利用した教育プログラム(なんと日本語版もあります!)が用意されていることに気づきました。なるほど、教育的な魅力に溢れた素敵な博物館があるはずです。