2011年6月12日日曜日

「学芸員らしい」1日

 
 昨日(6月11日・土曜日)は朝から晩まで、終日、「学芸員らしい」1日でした。

 午前中は「古文書講座(中級)」の講師をし、明治時代の「住吉新田跡書帳」の解読を行いました。

 厳密にいうと中級は輪読方式なので、解読するのは受講生の皆さんです。講師(私)は難読箇所や歴史的背景の解説を行い、第一義的には解読しません。毎回、受講生の皆さんはしっかり予習をしてきますので、テキストはすいすいと進みます。

 ただ、今回は「石油炭焚」という言葉に悩みました。明治時代の末に、道路補修で使われた「石油炭焚」とは何でしょう。悩んだ揚げ句、それは石油や石炭(コール)を焚いたもの、「コールタール」のことであろうという結論になりました。明治時代の「くずし字」の解読には、江戸時代のそれと違った難解さがあります。

 午後は「古文書講座(初級)」でした。初級は文字どおり「初歩から」教えますから、私が一字一句板書しながら進めていきます。昨日のテキストは江戸時代の「秤改めの通達」です。不正な秤(千木)を使用していないか、幕府が指定する検査者が京都からやって来るという内容でした。

 それにしても、午後からは不思議と疲れました。昨年1年間、初級講座を休止したので、まだ勘やリズムが戻っていないのかも知れません。

 業務終了後は徳島市内へ移動して、午後6時30分から徳島地方史研究会の6月例会です。若手新会員2名による報告でした。

 最初の報告は、織豊期の備作地域(宇喜多家領)の寺社統制の研究で、後の報告は、江戸後期の大坂の人足寄場の研究でした。いずれも手間と時間をかけた丁寧な研究で、聞いているうちに20数年前の学生時代に戻ったような気持ちになりました。近頃の自分といえば、「薄く広い研究」が多いので、時々には「狭く深い研究」がしたいですね。

 今後、ご報告の2人が、徳島をフィールドに充実した研究をされることを期待します。

 そんなこんなで帰宅すると夜10時前です。疲れましたが「学芸員らしい」充実した1日でした。

(主任学芸員 松下師一)