今日(10月15日)、視覚に障碍がある方と、音訳ボランティアグループ「まつばぎく」の方々が来館されました。音訳ボランティアとは、視覚に障碍がある方に、町の行政情報をお知らせするため、『広報まつしげ』などを音読してテープに録音しているグループのことです。
ここ5年くらい、機会をみては視覚に障碍がある方と伴に、当館を利用してくださいます。ただ、難しいのは、「資料館」「博物館」「美術館」という施設が、「見る」ことを前提にした施設だということです。「見る」ことができない視覚障碍者に、どのように施設の良さを感じ取ってもらうか、正直これは至難の業です。
私は、「触る」と「聴く」で代替するしかないと思います(まれに「臭う」もあるかな)。
本日来館のきっかけは、「青い目の人形」や「ミス徳島」への関心でしたが、さすがに触ってもらうわけにいきません(他からの借用品です。私が許可できるものではありません)。そこで代わりに、館蔵資料の中から木偶人形(オープン展示の現代人形師の作品)に触ってもらうことにしました。「ミス徳島」の市松人形とは違いますが、ともに日本伝統の人形です。材料の素材や胡粉の触感、からくりのおもしろさ、髪の毛や衣装の仕様を感じていただきました。
最初は恐る恐る触っていましたが、慣れてくると興味がわいて、積極的に人形の造作や素材を調べていました。
その上で、「青い目の人形」や答礼人形に関するビデオ(「ミス三重」をテーマにした作品)を聴いていただました。展示の理由を知ってもらい、雰囲気を理解してもらうためです。
そして最後に、巡回展会場です。市松人形の「ミス徳島」と木偶人形は違う人形ですが、胡粉や髪の毛、衣装など、共通の部分もあります。そのイメージを参考に、音訳ボランティアグループ「まつばぎく」メンバーの詳細な実況解説によって、視覚の障碍と、触覚が使えないハンディを何とか補いました。どうでしょう、楽しんでいただけたのではないでしょうか。
お帰りの際、「まさか木偶人形に触れるとは思わなかった。」と、微笑みながら話してくださいました。
(主任学芸員 松下師一)