2014年3月14日金曜日

開館20周年記念「徳島地方史研究会【松茂大会】」の記録

 
  松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館では「開館20周年」を記念して、徳島地方史研究会の第36回公開研究大会を松茂町へ誘致しました。

  大会テーマは、ここ2年間の大会テーマ(「災害に学ぶ阿波の歴史」と「土地に刻まれた阿波の歴史」)を継承し、さらに松茂らしさを反映させる観点から、「吉野川流域の開発と治水」です。

  100名を超えるお客様が来場されることから、本拠地である歴史民俗資料館での開催ではなく、松茂町総合会館の多目的ホールをお借りしました。


  2014年3月9日(日)の午前10時、公開研究大会の受付を開始しました。待ちかねたお客様が、次々と入ってきます。


  10時30分、開会です。徳島県立博物館の松永学芸員が、司会を担当します。主催者席の一番手前が私(松茂町歴史民俗資料館 主任学芸員・松下)です。


  冒頭挨拶は、徳島地方史研究会の元代表・立石恵嗣さんです。本来は、徳野隆代表が挨拶と大会の趣旨を説明する予定でしたが、インフルエンザのためにダウンし、急遽、元代表に交代です。


  続いて地元代表として、松茂町教育委員会の庄野教育長が、大会歓迎の挨拶を行いました。


  場内のお客様は、入れ替わりがありましたが、終日ほぼ平均して100名程がおいでました。


  報告者は5名。最初の報告は、徳島県埋蔵文化財センター主任研究員の島田豊彰氏で、演題は「中世阿波の船着き遺構と流通・交通」です。


  島田氏は、全国的な視野から船着き遺構の事例を挙げ、その後に吉野川流域の川西遺跡・大松遺跡等の遺構を紹介されました。


  続く2人目の報告は、東大阪市文化振興協会 旧河澄家学芸員の井上伸一氏で、演題は「吉野川下流域を拓いた上方の人々」です。


  井上報告は、主に笹木野村・住吉新田の開発史を検証したもので、私たち徳島の郷土史家が見落としてきた県外の史料を駆使され、吉野川下流域の近世史を書き直すものでした。(私、松茂町歴史民俗資料館の職員として、優れた成果発表に感謝を申し上げます。)


  お昼休憩をはさんだ後に、3番目の報告が始まりました。土木工学(史)の視点から、フジタ建設コンサルタント技術士の高田恵二氏が、「近世吉野川における河川技術と視点」と題して報告されました。


  コンピュータを駆使し、現代のデジタル地形図と近世の分間図を重ね合わせる手法など、「さすがは技術者」と思わせる内容と、愚直に古文書を解読し、現地を足で歩いた成果が組み合わさり、なかなか興味深い報告でした。


  4人目の報告者は、徳島地方史研究会の元代表で、現在は石井町教育委員会の社会教育指導員である立石恵嗣氏です。立石氏は、氏のライフワークともいえる「吉野川の治水と「八ヶ村堰訴訟」」の報告で、近代的な治水事業が地域社会にもたらした葛藤を紹介されました。


  立石氏は、明治時代に住民が県庁を訴えた「八ヶ村堰訴訟」を、「全国的にも注目を集めた裁判」と評しており、近代化の矛盾と捉えているようでした。


  最後、5人目の報告は、香川大学防災教育センター特命教授の松尾裕治氏で、報告題は「吉野川の明治以降の治水(堤防)対策」です。


  松尾氏は、かつて建設省徳島工事事務所(現・国土交通省徳島河川国道事務所)に勤務され、河川整備の現場で治水研究に携わっていた経験者です。私も10数年前(『四国三郎物語』などを編さんしていた頃)に度々ご一緒させていただいたのですが、変わらぬ熱弁に感心しました。


  そして最後は、全報告者が登場してのパネルディスカッションです。私がコーディネータを拝命しましたが、時間も45分と少なく、議論は消化不良だったかも知れません。


  とはいえ、朝から夕方まで丸一日、「吉野川流域の開発と治水」について、その歴史を考え続けたのです。来場の皆さん一人ひとりに、某か実りある成果がもたらされたものと信じています。

 
  午後4時45分、全日程が終了しました。

(主任学芸員 松下師一)
    
 

2014年3月2日日曜日

開館20周年記念・神津武男先生講演の記録

   
  2014年(平成26年)3月1日〔土〕、当館研修室を会場に、早稲田大学の神津武男先生の講演会を開催しました。これは、当館の開館20周年を記念して、公益財団法人徳島県市町村振興協会の助成を受けて開催したものです。


  神津先生は、人形浄瑠璃芝居の歴史研究(演劇史研究)の第一人者で、2004年には「第30回日本古典文学賞」を受賞されています。


  今回の公演のタイトルは「浄瑠璃本のベストセラー」で、国内はもちろん海外(アメリカ・台湾など)の図書館・博物館等を調査した膨大なデータをもとに、江戸時代のベストセラーをご紹介くださいました。

  語り口も軽妙で、随所に楽しいエピソードを織り交ぜ、とても楽しいご講演でした。また、内容的にも「目から鱗」という発見があり、とても感心しました。


  人形浄瑠璃芝居は、私たち徳島県民にとって大切な郷土の伝統芸能ですが、きちっとした史実を確認しないままにPRをしているように思われ、あらためて研究の大切さを再確認しました。当館も微力ではありますが、日本の演劇史学会に貢献していきたいと思います。

(主任学芸員 松下師一)