皆さん、ずいぶんご無沙汰しています。当館学芸員の松下です。ここ数ヶ月とても忙しく、このWebの更新が滞っておりました。おわび申し上げます。
久々、更新するにあたって、当館の展示の記録を掲載したいと思います。下記の写真は、本日(2月16日)まで開催の「版画家・井上員男ミニ作品展 -中西仁智雄コレクション“阿波木偶人形”との出会い-」の様子です。
ペーパードライポイント(紙凹版)の版画家・井上員男さんは、香川県の出身で、若い頃に吉野川流域を探訪し、阿波の民俗(生活文化)にモチーフ(画題)を求められました。今回展示の阿波木偶人形の版画も、そうした頃に中西仁智雄氏と出会い、氏のコレクションをスケッチしたのが創作の由来です。
現在、井上さんは神奈川県の鎌倉にお住まいで、ペーパードライポイントの創作を継続されています。
下の写真は、当館「中西仁智雄コレクション」の武智光秀をモチーフにした2枚の版画です。左の版画は頭(かしら)だけで、右の版画は衣装附きの全身人形です。なお、当館文化財展示室に展示中の武智光秀は、衣装附きの状態(右の版画の状態)で、同室南ケース内に堂々と立っています。
夕霧の版画は、モデルとなった木偶頭(でこかしら)と一緒に展示しました。
よく見ると、左の版画と右の頭とでは、少し違いがあります。そう、かんざしの本数に違いがあるのです。井上さんがスケッチした当時は、かんざしが1本破損していたため、3本しか描かれていません。その後、同コレクションが当館に寄贈される際に、かんざしを修繕したため、現在では4本挿さっています。
「がぶ」の版画は、少し怖い感じがします(なにしろ美女が変化する妖怪ですからね)。モデルとなった木偶頭「がぶ」は、当館文化財展示室の南ケース内に展示中です。
以上、ミニ作品展の記録でした。今回展示の版画4点は、いずれも当館所蔵作品です。
この「版画家・井上員男ミニ作品展」は、一端本日(2月16日)で終了しますが、また夏ごろには再開したいと考えています。
(主任学芸員 松下師一)