◇読ませる町誌 -続編第三巻-◇
いずこの「市町村誌」も、編集形態が類型化しほぼ似通っている。
これは、あらゆる分野の事実を網羅し、しかもそれらをある程度決まった順序で記録しなければならないだけにやむを得ないものがあり、『松茂町誌』の既刊誌も同じようなパターンで記述されている。
ところが、今回発行の「続編第三巻」は、その編集に相当な工夫が見られ、「読ませる町誌」に変容していることに気づく。
本年が町制施行50周年に当たることもあって、先ず冒頭に、特集「地域小史-50年のあゆみ-」を掲載している。12地域の略史と、住民18名の方々のインタビュー記事で、地域史をより身近に感じさせているのが印象深い。ややもすれば、この種の書冊は堅苦しく近寄りがたいイメージがあるものだが、各所に100に余るコラムを配するなど、その雰囲気を和らげ町民のものにしている。まさに編集の“妙”であろう。
B5判、889ページに及ぶ大全だけに、文庫本や新書本のように持ち歩き読みは困難ではあるが、各家庭に1冊は将来に遺す財産として備え、時に応じて開いて欲しい「松茂百科全書」である。
(「松茂を短歌で遺す会」創立者/元・松茂町文化財保護審議会委員 小山美明)
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